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2003/9/24
出前シュレッダー研究 /後編
 第二次ブームが起こりつつある【出前シュレッダー】(機密文書出張裁断サービス)最大のメリットは、自分でシュレッダーをかけるより遥かに早い時間で、しかも目の前で作業してくれるため、セキュリティへの心配が無いという点に尽きます。 処分すべき文書が一時的に大量発生した際の緊急対処としては特に効果的で、ご担当者としても社内への稟議が通しやすいという点では、大きな魅力ではないでしょうか?

 更に、今までオフィスのシュレッダーを使ったり、焼却処理をしていた事業所が、リサイクル率を上げる効果が得られることも、環境対策の改善という付加価値として、大きなメリットと言って良いでしょう。しかしこれらにまったく問題が無いという訳でもありません。

 【出前シュレッダー】に車載されている破砕機の処理能力は、カタログ上で見る限りどの業者も1000〜800kg/時間となっているのですが、これはかなり粗破砕(一片が大きい状態での破砕)での処理が前提で計算されており、破砕片が縮まって出てくるので一見小さく裁断されているように感じるのですが、手にとって広げてみると事の他大きく、ぶつ切りで固まって出てくる破砕片を丸ごと入手すれば、復元はオフィスシュレッダーより遥かに簡単です。

 これらは機械の調整で破砕片を小さくすることにより解決することが出来るのですが、そうすると処理時間が極端遅くなってしまうだけでなく、破砕片がまとまりにくくなり、あたり一面に舞い散ってしまう事態も起こったそうで、多くの業者はやりたがりません。


 また、使用される破砕機は主に“2軸式”と呼ばれるもので、多少の不純物(ホッチキスの針や小さなクリップ)はそのままでも投入可能なのですが、バインダーや大きなクリップなどは外さなければならず、ニーズが高い期限切れ保存文書を処理するようなケースでは、事前準備に相当の手間と時間を要します。

 中にはこれらの不純物でさえ付いたまま処理出来ることを謳っている業者も有るようですが、通常、破砕された紙片は古紙問屋に卸されていることから考えると、大きな矛盾が見えてきます。
 また、作業中長時間ディーゼルエンジンを駆動させることによる騒音と排気ガスの問題は、現在もまだ解決されていません。

以上を踏まえると、【出前シュレッダー】を利用するにあたっては、下記の3点を必須条件とするべきです。

1.決して業者まかせにせず、一連のプロセスごとに現場作業をくまなく確認する。
2.必ず破砕ブロックを手に取り紙片を広げて大きさを確認し、問題と思われるなら
  破砕の目を小さくすることを依頼する。
3.不純物は何でもOKという業者を利用する場合は、最終処理がどのような工程で
  リサイクルされているか確認する。

 では今後【出前シュレッダー】は、機密文書処理のアウトソーシングとして、広く定着できるのでしょうか?
 今回の取材を通じて、最も気になったのは、誕生から10年を経てなお、このサービスが「立会い処理だから安心」というキャッチフレーズの上に成り立っている点です。これは取りも直さず「私達を信用しないで下さい、だから目の前で作業を確認して下さい」と言っているのに等しく、アウトソーサーに最も必要な“ユーザーと業者との十全の信頼関係”が構築できないという、構造的欠陥を抱えています。セキュリティ対策をユーザー側の責任としてしまえば、身軽にはなるでしょうが、その分極めて限定したケースでしか利用してはもらえません。結果として受注できる文書が、事業所で処分されている機密文書の全体量に占めるパーセンテージはどうしても低くなってしまいます。

 コアビジネスへの特化を目的とした今日のアウトソーシングでは、“一つの業務をどれだけ広く深い範囲で任せられるか?”という点が、間接業務においては特に重要な要素となっています。いずれの業者においても副業の地位から脱しきれない【出前シュレッダー】が、単なる“ブーム”に終わらないための条件は、ユーザーから信頼されるるセキュリティ対策を施し、安心してすべてを任せられる体制の下で事業を展開することだと考えます。


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