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専門家インタビュー
権限の移譲とパートナーシップで成否がわかれるアウトソーシング
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■オペレーションを任せてこそ実現するコストパフォーマンス

司会 そうすると本来は一つの業務について、いくらということで発注すべきだということですね?

石井 そうです。時間いくら、人工いくらという単価には、残業代や派遣社員を管理する社員のオペレーションコストは含まれていません。一つの仕事を派遣社員10人でやると決めてしまうと、人数掛ける時間、掛ける単価というコストは当初の段階で確定してしまいます。本来はそこから効率化して残業を無くしたり人数を減らしたりという努力があるはずなのですが、派遣社員は指示通りに仕事はこなしても業務の改善まではしませんし、派遣会社が責任を持って業務を運営するわけではありません。指揮命令権は間違いなくユーザー側にあるわけですから、それらをオペレートするには相応の社員を各セクションに配置しなければならなくなってしまうわけです。

結城 私も事務作業に関するコスト計算ができていないと感じることは随所でありますね。一番大きいのは人件費や管理コストのはずなのですが、即効性を求められる事業環境のせいか、どうしても目先のキャッシュアウトを優先させてしまう。請求書に書かれた金額を前の業者より安くすることが、担当者の評価になるような風潮はいたるところでありますからね。使い勝手が悪くなってリスクが高くなり、後に取り返しのつかない大きな問題が発生してしまうということは、特に機密文書を委託する場合に起こりがちなケースと言えます。

司会 コストダウンと同時にパフォーマンスが下がっては意味がないですね。

石井 そもそもアウトソーシングというのは、導入当初業務のトランスファーコストやアウトソーサー側のマネジメントコストがかかるため一時的にキャッシュアウトが増えるんです。しかし、改善改革が進む過程で、人的リソースをコアビジネスに特化できることや効率の良い運営が実現することによって、売り上げの増加や別の業務のコストが下がり、リターンが増え会社全体の収益性が改善されていく、というマクロの視点で取り組む仕組みのはずなのですが、どうしても目先の見積もり額に縛られてしまう企業が多い。

結城 経営的な目で物事を見ることができないと、なかなかそこまでの判断はできないでしょうし、体力のある企業にいないとそこまでの発想は出にくい気がしますね。むしろ自分の仕事が無くなると、警戒してしまう企業担当者のほうが多いのではないですか?

石井 そうですね、アウトソーシングはリストラの一環というイメージがどうしてもつきまとってしまいますから、正直なところ受託しているお客様も、ほとんどがトップダウンか部長以上の判断でスタートしています。しかしオペレーションにかかる負担が無くなって、戦略の部分に特化できるというのは、優秀な総務担当者にとって理想的環境の筈ですから、実際に導入されているお客様では100%その懸念は払拭されています。

司会 任せられるところは全部任せて、残った部分がコアだという考え方だって成立するのかもしれませんね。アウトソーシングを成功させるのに大切な要素を一言で言うとなんでしょう?

石井 一言では難しいのですが、お互いがオープンマインドでパートナーだという認識を持つことは重要だと思いますね。パートナーとして業務の根幹の部分にまで入り込ませないことには、革新的な効果は望めません。閉鎖的な企業文化の上では決して成立しえないですから。

結城 いわゆる“系列”の企業風土が長く続いた中で、子会社、下受けといった感覚で業者との上下関係に固執する体質が根強い企業では、完全に外部の立場にあるアウトソーサーが、パートナーとして業務の中枢にまで踏み込むことには、どれだけその道のプロフェッショナル集団であったとしても、少なからず抵抗があるのではないですか?

司会 確かに人材派遣で対応したり、一部を外部委託するのであれば、どちらも社内の事情には必要以上に踏み込んではこない反面、旧来からの体制を抜本的に改善するようなものにはつながりにくい気がしますね。

石井 誤解しないでいただきたいのですが、私どもが総務全般をアウトソースされたとしても、あるオペレーションには派遣社員が適材だと判断した場合は迷わず採用します。もちろん派遣会社と人員は精査し、マネジメントは弊社がおこないますが、要は一つの仕事に対してどういう人材をどこから集めて、どう動かすかまでを任せていただかない限り、最良のパフォーマンスが発揮されません。総務というのは系譜も含めて企業文化を代表するようなセクションですから、外部の人間を中枢にまで入れて、戦術までの権限を委託するのはかなり勇気のいることだとは思います。しかし、そこを踏み越えない限り、アウトソーシングをした本当の効果が企業にもたらされることはないでしょう。

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